伊勢丹三越の閉店から考える百貨店の問題とこれから




今日もウワノソラヒルズのスタジオからお届けします、青山バジルです。

東京都府中市の伊勢丹が2019年9月に閉店することが明らかになりました。百貨店があるということが心の支えだった、シンボルだった、という惜しまれる声も多くあるようです。

三越伊勢丹ホールディングスは伊勢丹 相模原店、さらには新潟 三越の閉鎖も決定しているようで、赤字が広がっていることも明らかになりました。

私は現在40歳で、百貨店で物を買うのがステータスというわけではありません。両親世代はそうだったでしょう。

先日、銀座の百貨店に行きましたが、上階ってガラガラなんですね。びっくりしました。そもそも百貨店で何か買う、ということをこの数年であったでしょうか?

・・・まったく思い出せませんね。

10年前に伊勢丹でバッグを買いましたっけ。そのくらいです。

地下食料品売り場は賑わっていますが、それ以外はどうしたって生き残りの道が不明です。

そもそも日本の百貨店というモデルそのものに問題があると私は思います。

日本の百貨店って、独自性がないんですね。ことアパレルが典型的で、伊勢丹三越も高島屋も松屋も、たいして変化がないわけです。アメリカの百貨店は独自にしっかり仕入れをしていますから、オリジナリティがあります。日本は、売り場は用意しますよ、

百貨店の委託販売が破綻を招いた

戦後間もなく頭脳明晰な経営者が、紳士服の大量生産を始めます。

この時、その経営者は百貨店という、その土地で最も良い立地の店舗に商品を売り込む方法を思いつきました。

委託販売です。

これは単に商品を置かせてもらう委託販売ではなく、販売員も付けましょう!という方法だったのです。

さらに、百貨店としては商品はシーズンの入れ替えの時まで置いてもらえ、売れ残った商品は引き取って貰える、

その上一番コストのかかる販売員まで付けてくれる!

もっといえば、什器とか備品まで見てもらえる。

こんな楽なことはないと思えませんか?

アパレル側からしたら、一等地にお店を開くよりも、もう立派な場所に店舗があるんだから、それを利用しない手はなかったわけです。

百貨店の委託制度の問題点

資本力のあるアパレル企業ブランドばかりになる

ですが、この販売員も付いてくる委託制度の問題点もあります。

まず、百貨店自身が商品のリスクも負っていないんですね。

商品はアパレル側が供給しますし、他の百貨店と商品差がつきにくいんです。

それに販売員を付けてくれるとなると、資本力のある大手アパレルの商品が売り場の多くを占めます。

すると、どの百貨店も大手アパレルのブランドになってしまうのです。

委託販売で原価を下げざるを得ない

さらに、百貨店で販売する洋服は価格が上がります。

坪効率というのがありますが、商品が回転すれば効率が上がりますし、回転が悪いと坪効率は下がりますけど、特に紳士コートなどの重衣料なんかは百貨店の商品の中でも回転率が悪い商品ですからね。

でも量販店ではなく百貨店ですから、人がそれなりのサービスを提供しなくてはいけません、置いているだけで次々売れていく商品ではないんです。試着もしたいですし、ウンチクも語って欲しい、丁寧に袋に入れて欲しいわけです、百貨店で買うのですから。

だから価格を上げざるを得ません。すると売れないんです、高いから。

売れないからどうするかというと、原価を下げるんです。

原価を下げると昔から買ってる人はすぐにわかるんです。いつも通っている寿司屋のネタが落ちたらわかりますもの。服だって一緒です、好きなブランドであればなおのこと。

百貨店の原価はどんどん下がっている

私の師匠がアパレル業界に入った1968年、重衣料の百貨店での販売価格は、原価の3倍だったそうです。

つまり商品代金1万円なら、30%の3,000円を製作費にかけることができます。

ところが商品価格を変えず、原価ばかり抑えてきた百貨店は今や、1万円の商品に対し原価20%(2,000円)程度になっているといいます。

メルカリで買う新しい消費者

価格・機能を前面に出して売り上げを急速に伸ばしてきたのはユニクロを筆頭とするファストファッション。

ファッション性も高まっていて、百貨店の重衣料の脅威になっています。

さらに、ゾゾタウンを初めとするECサイトで購入する、またメルカリを始めとする中古衣料業界が目覚ましい発展をしているわけです。私の運営している会社20代の子に聞くと、百貨店に行くことはほとんどないそうですが、どうしても必要があって行った、という例を聞きました。

「メルカリで購入する時に、どうしても(そのバッグを)持った感覚と実際の色を知りたかったので、百貨店に行きましたね。」

20代にとっての百貨店、それはは今や商品を確かめるだけの場所なのです。

百貨店が向かう場所

百貨店にあるから売れる、という時代は終わりました。

ですが、そこにしかないオリジナリティのある商品や、セレクションを人は求めています。そして何より、専門家の意見を聞きながら買いたい、と思うのも消費者です。

そうでないならばネット上で購入できる方が楽なのです。アメリカでもアマゾンが猛威を振るっています、トイザらスをはじめ小売店は次々と閉鎖に追いやられる中、オフィスデポでは専門スタッフを増やし業績を伸ばしています。

こうした人にしかできない領域をどう高めていくか?そこが百貨店が向かう場所なのではないでしょうか?

以上、ウワノソラ ヒルズのスタジオからお届けしました。

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

青山バジル

アパレル企業経営者。 大手企業に新卒入社するも3年で退社。その後フリーター、フリーランスを経てベンチャー企業に入社。現在はアパレルの会社を経営しながら面接を行う日々。 大手から中小企業、フリーランスまで自分自身の様々な仕事経験から、働き方に悩むビジネスマンに向けてメッセージを役に立つことをお届けします。